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2008年12月24日 (水)

絶望を希望にかえること

最近読み終えた本。
結局、「住まい」学習はまだ継続しています。


『アラスカ 風のような物語』(星野道夫、小学館文庫、1999年)

寒さ大嫌いの私は絶対に行こうとは思わないけれど、
アラスカの大自然、動物たちの生きる姿は
やはりスゴイなと思う。
写真が多く、ゆったりとした気分で読めます。


『若者たちに「住まい」を!-格差社会の住宅問題』
        (日本住宅会議編、岩波ブックレット744、2008年)


まさに今の情勢にふさわしいタイトル。
4人の筆者が、若ものと住まいをめぐっての、
現状、課題、政策について述べています。

とくに第4章の「若者の住宅問題をどう解決するか」は、
若者の住宅政策の貧困と、打開の方向が
提案されていて、勉強になります。


『地場工務店とともに-健康住宅普及への途』
                   (山本里見、東信堂、2006年)


シリーズ刊行している、居住福祉ブックレットの6。

オール電化住宅が、健康に及ぼす良い影響に驚きました。
見方ががらっと変わりました。

「地場工務店は予防医学の町医者」という著者の、
すばらしい勉強熱心さに敬服します。
家を建てるなら、良質な地場工務店がおすすめか!?


『子どもの道くさ』(水月昭道、東信堂、2006年)

居住福祉ブックレットの7。

子どもの道くさ(小学生対象)に、本格的に
科学の光があたりました! そのことにまず感動。

著者は、子どもの道くさを実際に調査・研究し、
「道くさの型」を9つに分類しています。
子どもの道くさの意義を発達過程のなかで
とらえ、その意義を語ります。

そして、
「子どもの健全な発達には、彼らがまちで健全に道くさを
展開できるということが大事なのである。子どもの道くさを
可能とし、それを許す地域の環境があることが、子どもの
発達を支える居住福祉環境となっている」と強調します。

子どもを巻き込む犯罪が報道されるなか、
「管理・規制」を強める大人社会。
著者はその弊害点を指摘し、
解決するための方策も提案しています。

何より、「あー、それそれ、やってたなー」と
自分が小学生の気分に戻れる道くさ紹介が面白い。

大人になったみなさんの、「道くさ観」が一変すること
間違いありません。


『精神科医がめざす近隣力再建』(中澤正夫、東信堂、2006年)

居住福祉ブックレット10。

近所づきあいや、子どもの集団遊びがなくなった現代社会の
「住まい方」について精神科医の立場から考察をしています。

近所づきあい、私もほとんどできていません…。


『住むことは生きること-鳥取県西部地震と住宅再建支援』
                     (片山善博、東信堂、2006年)


居住福祉ブックレット11。

2002年6月に鳥取で行なわれた、
日本居住福祉学会主催「第1回・居住福祉推進フォーラム」
での、片山鳥取知事(当時)の講演とシンポジウムをまとめたもの。

とても、とても感動しました。

鳥取西部地震が起きたのは2000年10月6日。
翌日から被害調査に現地に入った片山知事は、
「災害にあった人たちに本当に必要なものは何だろうか、
何を求めているのか、一番大切なものは何か」ということを
把握しようと考えました。

そして住民にたいする聞き取りなどでわかったこと、それは、
「今後ここにちゃんと住み続けることができるのか」という
「いい知れぬ不安」だったと言います。


その時、分かったのです。住宅というものが、被災地を
復旧する一番のキーワードなんだと
。道路とか河川、橋
だとかの災害復旧も大きな柱としてもちろん当面の課題
ですが、今回の災害の復興には、住宅を建て直す、これ
を復興、復旧することこそが最大の仕事なのだと、その時
私は直感したのです」


また、役場の女性職員が、目の前の被災者さんの生活を救えない
無力感に涙を流し、その話を聞いていた片山知事も思わず涙した話は、
行政の長としての使命感のようなものを感じさせてくれます。

その後、片山知事は、
全壊した家には上限300万円、修繕には上限150万円の
支援ということを、地震の10日後には発表します。
日本では、前例のない住宅再建への公的な支援でした。

阪神大震災のときでも、「住宅は私有財産だから」という
理由で、直接支援の制度はついにできませんでした。
鳥取のこうした対応に、国は当初ものすごい反対をしたそうです。
しかし、片山知事は、
「人が住み続けられる地域を守ることは、
きわめてパブリック(公的)なこと」と言い切ります。

また、
災害復興に当たって何が一番重要かと問われれば、もう
迷わず、それは出来る限り元通りにしてあげること、元通り
に近づけてあげること、このことに尽きると思います。

 よく大火があったり、地震があると、この際だから今まで
出来なかった街づくりをしようと、区画整理をしたり再開発を
したりしがちですが、私は、それは間違っていると思います。
 …復興というのは、100年後、200年後の人のためにする
んじゃないのです。
災害復興は目の前で被害に遭った、今、
ここにいる本当に困窮を極めている、泣いている、その一人
ひとりのお年寄り、住民の皆さん、そういう人たちのために
するべきであって、100年後や200年後の人のためじゃな
いのです
。その辺が都市計画や街づくりと災害復興を混同
して考えがちなのです」

とも強調します。

阪神大震災の復興計画との違いを痛感しました。
鳥取の場合には、地震後の孤独死や自殺は
1件もなかったそうです。
つまり行政の姿勢の問題です。雲泥の差です。
それを学べる本でもありました。

さいごに、興味深かった話を紹介します。
「住宅再建支援」を発表してからの、人びとの反応です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 住宅再建支援の発表を受けて、事態がずいぶん変わっ
てきたからです。被災地にすごく元気が出てきたのです。
 それまで、これから自分たちはどうなるのかと不安にから
れていた被災者たちに、何か元気が蘇ってきたのです。
 <行政がそこまで手助けしてくれるんなら、自分たちも、
さぁこれから頑張ろうじゃぁないか>という意欲が湧いてき
たわけです。
 後で聞いた話ですが、現地でずっとメンタルケアをして
いただいている、精神科のチームのお医者さんから、
 「
とにかく住宅再建支援のメッセージを発したことが、
最大のメンタルケアでした

 とおっしゃっていただきました。
 「ああ、そういう効果があったのかなぁ」
 と私は思いました。
 災害で皆が不安な時は、大げさではなく、絶望しかねない
のです。絶望するかもしれない人たちがいっぱいいるんです。
 
その絶望を希望に変えるということ。これが災害の復興に
あたっては、ずいぶん大切なことだな、と私はその時に知り
ました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今年もあと1週間。
雇用情勢は最悪の事態となっています。
派遣や非正規労働者が大量に首を切られ、
「いい知れぬ不安」をもっています。
「うつ病」が増えているともいわれています。

政治が今しなければならないこと、
それは「けっしてあなたたちを見捨てません」というメッセージを
送ることだと思います。具体的政策をたずさえて。

「絶望を希望に変えること」、
それが政治の責任ではないでしょうか。





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