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2008年8月14日 (木)

靖国神社って…

きのう(13日)の晩は、
倉敷医療生協労組青年部の学習会
水島協同病院へ。

はじまる前に労組の事務所へ寄ると、
「全国集会への目標を決めたよ!」と
うれしーい報告。
倉敷医療生協労組として、
1日目50人、2日目30人、3日目50人の
目標で取り組みをするのとことです!
わーい。石川先生も、尾崎さんも、ここでは
大人気ですので、やる気まんまんの様子でした。
ありがとうございますtulip

さて、学習会ですが、
参加は5名と少なかったのですが、
「靖国神社ってどんな神社?」というテーマで
がっつり学習しました。
こんなテーマで学習会をしたいという
青年たちの真剣なまなざしが嬉しかったです。
講義のあとも、いろいろと質問が出て、
とてもよい学習会になったのではないかと思います。

Dscn4727
 人数が少なかったので、
 写真も控えめに・・・。
 



では、以下、レジュメです。
このテーマで話をするのは、
これまでに何度もあったのですが、
内容はあまり進歩してないですね…。


一。靖国神社とは
 
1。靖国神社の概略
  
◇「空からマップ」
  
◇「合祀」とは何か

2。その歴史
  
◇国家神道の成立
   
*国家神道とは
    
・他の宗教の上に君臨する事実上の国教(「天皇教」とも言える)
    
・その他の宗教の、信教の自由や、思想および良心の自由は
     徹底的に弾圧された
    
・国家神道がおよぼした影響は、教育・文化・思想・軍事に
     いたるまで、計り知れないものがある。
  
◇1869年(明治2年)「東京招魂社」として創建
                         →1879年「靖国神社」に
   
*陸・海軍省が所管する「国家機関」としての靖国神社
   
*総合的な軍事施設としての性格
    
・付属施設としての遊就館(1881年竣工)、国防館(1934年開館)
     は、日本で唯一の総合的な公開の国立軍事博物館であった。
     刀剣の陳列場としては日本最大であり、祭神となった戦死者
     の遺品、戦利品の兵器、各種の兵器の発達を歴史的にしめ
     す展示など、国民にたいする軍事的啓蒙施設として大きな役
     割を果たした。

 
3。死者の選別
  
◇天皇のために死んだ人のみ-合祀のための厳格な基準
   
*何よりも天皇に忠誠をつくして死んだ、という基準。「軍の要請
    に基づいての戦闘参加」「国家総動員法に基づく徴用」「国民
    義勇隊の隊員でその任務に従事中」など。
   
*軍人であっても、自殺したり、敵前逃亡して死んだ人は
    入れられない。
   
*日本国内の民間人戦没者の大多数、空襲や原爆で亡くなった
    人も当然入っていない。

 
4。その役割をみる
  
◇福沢諭吉が靖国提唱!?
   
*日清戦争直後(1895年)に福沢諭吉の書いた「戦死者の大祭
    典を挙行すべし」
    
<簡単に内容を要約すると>
    
・日清戦争に勝利し、がい旋将兵は爵位・勲章を与えられ栄光
     に包まれているが、戦死した将兵や遺族には国家は冷たかった。
    
・家族を失って悲嘆の涙にくれる人びとを放置していたのでは、
     次にアジアで戦争をする時に、国家のために命を捨てても戦う
     という兵士の精神を調達できない。
    
・兵士・国民が満足するには、「名誉ある死」として讃えられなけ
     ればならない。
    
・帝国の首都東京に、全国戦死者の遺族を招待して、天皇自ら
     が祭主となって、死者の功績を褒め称え、その魂を顕彰する
     勅語を下すことが必要である。
    
・つまり、戦争で死ぬことを「幸福」と感じさせることが肝心なのだ。

  
◇「死んで靖国で会おう」が合言葉に
   
*「天皇陛下のため」「お国のため」に戦死すれば、「神」として靖
    国神社に祀られる。それが、最大の光栄とされた。「九段で会お
    う」が兵士の合言葉に。

  
◇靖国の精神-国民感情を国家が収奪する
   
*「感涙座談会」「軍国の母を訪ねて」にみる遺族感情

   
*戦争推進の精神的支柱として
     
     
「これらの言葉には、天皇の神社・靖国がその絶頂期に果た
     した精神的機能、すなわち、単に男たちを『護国の英霊』たる
     べく動機づけるだけでなく、『靖国の妻』、『靖国の母』、『靖国
     の遺児』など女性や子どもたちも含めた、『国民』の生と死の
     意味そのものを吸収しつくす機能が典型的に表現されている」
                      
(高橋哲哉『靖国問題』、ちくま新書)

   
*感情の錬金術

     
「戦死者を出した遺族の感情は、ただ人間としてのかぎりでは
     悲しみでしかありえないだろう…ところが、その悲しみが国家
     的儀式を経ることによって、一転して喜びに転化してしまうのだ。
     悲しみから喜びへ。不幸から幸福へ。まるで錬金術によるかの
     ように、『遺族感情』が180度逆のものに変わってしまうのである」
                               
(高橋哲哉、前掲書)

   
*国家は、遺族の「悲しみ」さえ奪った

     
「戦時中は、自分の肉親が理不尽に途中で生を断絶させられ
     た場合、妻であっても母であっても、あるいは兄弟であっても、
     公的な言説空間だけでなく、私的な言説空間でも、悲しみや怒
     りを露にすることを奪われていた。遺族は、感情を抑圧させら
     れていたわけです。『名誉の戦死』『誉の戦死』は悲しみや怒り
     を回収する言説でした。あるいは喜びに転化させるということ
     だった」
    
(田中伸尚『現代思想』8月号「討議・<靖国>で問われているもの」)

  
◇昭和天皇は、1929年の4月に山東出兵による戦没者合祀の
    臨時大祭で初めて靖国神社を参拝して以後、45年4月まで、
    20回参拝している。

 
5。戦後はどうなったか
  
◇GHQの「神道指令」(1945年12月15日)
   
・政府などの公的機関による神社神道に対する援助の禁止、
    公立学校における神道教育の禁止、公務員の公的資格で
    の神社参拝などの禁止、を求めたもの。
  
◇靖国神社は、単立の宗教法人に
   
*合祀は続ける-厚生省が戦死者名簿を集約、靖国神社に
    提供していた
   
*現在の合祀数は約246万6千柱
  
◇A級戦犯の合祀(1978年)によって外交問題に発展する
   
*A級戦犯とは、極東国際軍事裁判(いわゆる東京裁判)にお
    いて、「平和に対する罪」、すなわち侵略戦争を指導した罪の
    ゆえに被告とされた28名のこと。このうち、東条英機元首相、
    板垣征四郎元陸軍大将など14名が靖国神社に合祀された。

二。靖国問題①-日本の戦争をどうとらえるのか
 
1。靖国神社はどう主張するのか
  
◇靖国神社の二つの使命
     
(靖国神社が編集・発行している『遊就館図録-靖国神社』より)
   
①「英霊」の「顕彰(=ほめたたえる)」
    
*靖国神社は、戦没者の「追悼」施設ではなく、「顕彰」施設
   
②「英霊が生まれた時代である近現代史の真実を明らかにすること」

  
◇靖国神社がいう、近現代史の「真実」とは
   
*『自存自衛』-欧米ロシアの列強にせまられ、やむなく始めた
    戦争だった
   
*『アジア諸国の解放』-戦後、アジア諸国は欧米の植民地を脱し、
    独立した

 
2。大切なのは、殺された側の感情-日本はアジアで何をしたのか
  
◇日本軍戦死者たちの参加した戦争は、アジアにどれほどの死と
    被害をもたらしたのか
   
*2000万人以上の死者、アジア人蔑視からくる残虐性
   
*別紙資料参照
  
◇「遊就館」にかけているもの
   
*傷つけ、殺された側-アジアの人びとの視点
  
◇アジアの人びとは、首相の靖国参拝をどうみるか

三。靖国問題②-個人の思想及び良心、信教の自由への侵害
 
1。戦後も、遺族の意志とは無関係に合祀
  
◇仏教徒・菅原龍憲さんの合祀取り下げ願い
   
*映画「靖国」にも登場されています
  
◇他宗教の人も、朝鮮・台湾の人も、「遺族の意志」に関係なく
   合祀を行う靖国神社
  
◇日本国憲法19条「思想および良心の自由」、20条「信教の
   自由」の侵害
   
*厚生省(当時)は、戦没者の名簿を、一宗教法人である
    靖国神社に提供し続けた

     
「国家と個人の関係の中で、個人がどう生きるかを自分で
     決めるということは、戦後の人びとが獲得してきた生き方で
     す。信教の自由や政教分離原則はその核です。それがい
     きなり国家権力によっていわば『拉致』された」
                     
(田中伸尚『現代思想』8月号)

     
「私は、ここに靖国の本質が出ていると思います。本当は、
     遺族のことなんて関係ないんですよ。遺族の追悼感情なん
     て全く無視している。本当に遺族の追悼のため、遺族の追
     悼感情を満たすためであれば、遺族がやめたい、自分の
     やり方でやりたいと言ったときに、取り下げるのが宗教法
     人としては当然でしょう。信者が離れたいときに宗教団体
     が許さないということになったら、人権問題です。なぜ靖国
     だけが認められるのか。結局、『国家のため』に祀るから
     でしょう。徹頭徹尾『国家のため』に祀るわけであって、遺
     族のことは関係ない。靖国に祀ってほしいと思っている遺
     族はたまたま国家の意志と一致しているだけです」
                     
(高橋哲哉『現代思想』8月号)

 
2。「政教分離」原則
  
◇侵略戦争の反省としての政教分離
   
*日本国憲法20条3項
     
「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動
     もしてはならない」
   
*二度と国家が個人の心に入り込み、侵すことのないように
    という縛り

四。靖国問題をめぐる情勢
 
1。小泉首相の6年連続参拝
  
◇自衛隊の海外派兵(インド洋、イラク)
   
*自衛隊員の「戦死」の可能性という背景も
   
*「戦争をする国」づくり
  
◇アジア諸国との外交問題に発展
   
*とくに中国、韓国との外交関係を冷やした
  
◇外務大臣(当時)・麻生太郎は…
   
*06年1月28日に名古屋市内で行った講演で
    
「英霊の方からしてみると、天皇陛下のために『万歳』と言った
    んであって『総理万歳』と言った人はゼロ。だったら天皇陛下
    の参拝が一番なんだ」
   
*その講演後「遊就館の展示は中国から見れば問題があるのでは」
    と
の質問に対し…「中国が言えば言うだけ、行かざるを得なくなる。
    
『たばこ吸うな』と言われたら吸いたくなるのと同じだ」

 
2。靖国派「期待の星」安倍首相の登場と撃沈
  
◇小泉首相の靖国神社参拝についての安倍氏のコメント

    
「(国家を)命を投げうってでも守ろうとする人がいない限り、
    国家は成り立ちません。その人の歩みを顕彰することを国
    家が放棄したら、誰が国のために汗や血を流すかというこ
    とですね」(『この国を守る決意』)と当然視。

   
*靖国神社崇敬奉賛会主催の公開シンポジウム(2004年11
    月27日)にも出席し、「小泉総理の意志を、次のリーダーも
    その次のリーダーもしっかりと受け継いでいくことが大切で
    ある」と述べている。

  
◇天皇制、侵略戦争について(首相になる前の発言)

   
「日本国民は、天皇とともに歴史と自然を紡いできたんです」
   
「日本の歴史がひとつのタペストリーだとすると、その中心に一本
   
通っている糸はやはり天皇だと思うのです」(『安倍晋三対論集』)

   
「侵略戦争をどう定義づけるかという問題も当然ある。学問的に
   確定しているとはいえない」
   
「さきの大戦をどのように定義づけるかということは政府の仕事
   ではない。歴史家の判断に待つべきではないか」
                   (
2006年2月16日、衆院予算委員会)

  
◇追いつめられた靖国史観派-世界の構造変化が背景に
   
*安倍政権は、靖国派勢力で内閣を固めたにもかかわらず、
    最初の外遊先に、「歴史問題」での謝罪を目的とした中国と
    韓国を選ばずにはおれなかった。
   
*「慰安婦」問題での本音発言は米国から圧力がかかり、
    「おわび」連発
   
*安倍政権は07年夏の参議院選挙で歴史的大敗
   
*後継には、麻生太郎より靖国色が薄い福田康夫氏を選ばざる
    をえなかった
   
*その背景には世界の急速な構造変化(東アジア情勢の発展)
    
≪参考文献『覇権なき世界を求めて-アジア、憲法、「慰安婦」』
                      
石川康宏、新日本出版社、2008年)

  
◇福田首相
   
*福田首相も、「日本会議議連」「改憲議連」「靖国議連」に所属。
   
*「任期中は靖国参拝はしない」と言っているが、2002年までは
    毎年参拝していた。2001年8月15日、小泉首相(当時)が参拝し
    たとき、官房長官として随行。参拝批判にたいして、「小泉首相
    の信教の自由だ」と擁護。
   
*ちなみに、安倍前首相が官房副長官当時「核兵器使用は違憲
    ではない」と発言したのに対して、核保有について「(憲法に)持
    ってはいけないと書いていない。私個人の理屈から言えば持て
    るだろう」と官房長官記者会見で発言(
02年5月31日)。

 
3。和解のために-私たちにできること
  
◇国民が侵略戦争を肯定する政治家を選ばない
   
*世界構造の変化によって、靖国派が本音をいえない、行動でき
    ない状況になっているが、根本的には、そういう政治家を日本の
    国民が選ばない「賢さ」が必要。
   
*「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて
    行動し」(憲法前文)

  
◇私たちの歴史を学ぶ努力の水準を引き上げる
   
*東アジアには、複雑で政治的な問題が山積
   
*解決には、長い時間が必要
   
*対話と討論、交流をつみかさねて
   
*私たち1人ひとりが、歴史を学ぶ努力をする
    
・先入観、決めつけでなく、事実から出発する
    
・被害者、加害者の話を直接聞く、直接歴史の現場に行って
     みることも重要



【靖国問題での参考文献】
『靖国神社』(大江志乃夫、岩波新書、1986年)
『靖国の戦後史』(田中伸尚、岩波新書、2002年)

『Q&A もっと知りたい靖国神社』
        (歴史教育者協会編、大月書店、2002年)

『靖国問題』(高橋哲哉、ちくま新書、2005年)
『現代思想』05年8月号-特集・靖国問題
『国家と犠牲』(高橋哲哉、NHKブックス、2005年)
『靖国問題と日本のアジア外交』(松竹伸幸、大月書店、2006年)

『フィールドワーク 靖国神社・遊就館』
          (東京の戦争遺跡を歩く会、平和文化、2006年)

『「靖国」という問題』(高橋哲哉・田中伸尚、金曜日、2006年)



以上。




そういえば、先日、映画『靖国』観ました。
思ったよりかはイマイチでしたが、
十分観る価値はある映画だと思いました。

遺族の意志と関係なく、死者を「拉致」している
神社であることが、よくわかります。



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