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2008年6月 6日 (金)

ナイチンゲールの偉大さ

今日は(6日)午後から、ソワニエ看護専門学校へ。
8回目の講義は、『君たちはどう生きるか』を
使っての最後の授業でした。

読書日記は、
『コード・グリーン』という本と、
『ナイチンゲール 神話と真実』という
2冊を紹介しました(またブログで紹介します)。

講義内容は、労働学校でも先日やった、
コペル君の苦しみ、の話です。
でもって、そのことを話をしたあと、
関連させるかたちで、
ナイチンゲールがいかに「人間らしい苦痛」に
向きあったか、ということを語ってみました。


以下は、その部分のレジュメです。
引用がほとんどですが・・・。




三。ナイチンゲールの偉大さ-長久の私論
 
1。偉大な看護師であったと同時に、偉大な人間だった、なぜか?
  
◇人間らしい苦痛に、向きあい続けた人

  
◇ナイチンゲールの人生における苦闘

   
①看護師になること自体が、たたかいだった-別紙資料参照
    
*こうありたい自分と、現実のギャップ
    
*けっして、あきらめなかった

   
②クリミア戦争の検証のなかで
         ー自らの過ちと向きあい、真実を広げようと奮闘した

    
*『ナイチンゲール 神話と真実』から
      
・事故(過誤)論のモデルとなる(川島みどりさんの指摘)

      
「ナイチンゲールは、スクタリの彼女の病院で亡くなる兵士
      のあまりの多さについて、軍司令部の無能さと非常さが物
      資の補給を滞らせ、そのため極度の栄養失調と疲労困憊
      のすえ、手遅れとなって搬送されてきたためであると、かた
      く信じていた。戦後になってこれを実証しようとして、統計学
      者のウィリアム・ファーとの共同作業を始めたのだったが、
      
25,000人の兵士のうちの18,000人を死なせた主な原因は彼
      女がそれまで確信していたこととは異なって、兵舎病院の
      過密さと不衛生な状況が病気を蔓延させ死者を増やしたと
      の結論を得た。しかも、
最も死者の多かったのがスクタリ
      の彼女の病院であり、初歩的な衛生事項の注意を怠った
      がための惨事であった事実を認めること
は、政府や軍当
      局を激しく非難し、彼女に敵意を持つ管理者たちを批判し
      た理由そのものを、自ら否定しなければならないことに通じ
      る。
       
クリミアから帰還した彼女が、国民的支持や賞賛の蔭で、
      しばらくのあいだひっそりと沈黙を守ったことは、戦時救護
      の疲労からの心身の不調と、何よりも彼女の謙虚さゆえと
      する向きもあろう。しかし実際は、
真実を知って虚脱状態に
      なるほどの衝撃と屈辱に耐えていたナイチンゲールがいた。
      学ぶべきはその先である。彼女は、知り得た事実-異常な
      死亡率の要因-をできるだけ多くの人々に知らせることで、
      再び同質の過ちの反復を避けようと強く決意したのであった。

      のみならず、女王や政治家を巻き込んだ隠蔽工作に対して、
      
『真実の公開』への闘いを挑み、歴史的事実を後世に残す
      ために文字通り生命をすり減らす思いで立ち向かったので
      ある。
そうすることによって、自らの責任をとろうとした。この
      ことこそまさに、今、わが国の医療界が直面している事故や
      過誤の事実公開、情報開示への教訓でなくて何であろう」

       
「小さな失敗でも、率直にこれを認めることは勇気の要る
      ことである。まして、いまや英国民の栄誉としてのナイチン
      ゲールであったから、自分の患者たちの多くが、自分の否
      定し続けてきた原因で死んだことを認めざるを得なかった
      苦悩は想像にあまりある。しかし、
彼女は多くの兵士らの
      死に報いるために、失敗の教訓を限りなく活かしてその後
      の人生を生きたと思う
。心身ともによい状態でなかった十年
      にしぼってみても、その仕事の多様さと質の高さに驚くが、
      『人間のために何事かをなし得た人々は、今も昔も極めて
      人間らしさの激しくきつい人々、その情熱も知力も意志もひ
      としおつよい人々ではなかったのだろうか』という宮本の分
      析したナイチンゲール像が浮き彫りになって迫ってくる。
       
失敗の教訓を活かした一つは、『病院覚え書-第1版 
      
1858年』の執筆である。これは、英国の病院における死亡
      率の高さの真の要因を探るため、統計学と帰納的推理を
      用いて分析した結果、死亡率に影響する条件として、立地
      条件の悪さに加えて衛生状態の欠陥があるといい、『ひと
      つ屋根のもとに多数の病人が密集』『ベッドひとつあたりの
      空間の不足』『換気の不足』『光線の不足』の四点を挙げて
      いる。なかでも多数の患者を詰め込んだ病院におけるすさ
      まじい死亡率の例として、スクタリの病院で5人のうち2人が
      亡くなったことを示しながら、比較対象としてのクリミアのテ
      ント病院では、整った建物も毛布もなく食物や薬品まで不
      足していたのに、死亡率はスクタリの半分であったとして、
      過密現象がいかに危険かを述べている。そして、『たとえ
      どんなに小規模病院であろうと、このように恐ろしい生命
      無視の事態をもたらす構造上の欠陥や管理の誤りを繰り
      返さないようにしたい』と述べている」
         
(『神話と真実』より、
            川島みどり「
21世紀-ナイチンゲール像への接近」)

     
*ナイチンゲールの『病院覚え書』は、病院の建築(病棟の
      設計、立地条件、衛生環境、換気、ベット配置、空間の広
      さ、など)とはどうあるべきか、を示した、世界で初めての
      著作。この流れは『看護覚え書』(
1859年)にもつながっている。

 
2。ナイチンゲールのメッセージ

    
「私たちに私たちの苦しみをお与えください、心をこめて私
    たちは天に向かって叫びます-無関心よりも苦しみをくだ
    さい-と。無からは何も生まれませんが、苦しみからは癒
    しがもたらされます。麻痺よりも苦痛のほうがずっとましで
    す。努力すること100回、そして波にのまれてもよいのです。
    そうすれば人は新しい世界を発見するでしょう。磯辺に無
    為に立ちつくすよりも新世界への道を先触れしながら波に
    のまれて死んだほうが10倍もよいのです」

    
「満足しないこと自身、ひとつの与えられた特権といえない
    でしょうか? そのとおりです。あなたの種族、人類のため
    に苦しむのは、ひとつの特権です-それは、救世主や殉
    教者たちだけのものではなくいつの時代でも多くの人々に
    担わされてきた特権なのです」
     
(F・ナインチンゲール『思索への示唆』、カサンドラより)

   
*患者さんの「人間らしい苦痛」を想像する力

    
「この世の中に看護ほど無味乾燥どころかその正反対の
    もの、すなわち、自分自身は決して感じたことのない他人
    の感情のただ中へ自己を投入する能力を、これほど必要
    とする仕事はほかに存在しないのである」
    
(F・ナイチンゲール『看護覚え書』、補章「看護婦とは何か」より)

   
*「進歩」し続けようとする強い意志

    
「もう一つの危険。それは固定化してしまって進歩しないこ
    とである。『進歩のない組織でもちこたえたものはない。』
    われわれは未来に向かって歩いているだろうか。それとも
    過去へ向かって? われわれは進歩しているだろうか、そ
    れとも型にはまってきているのだろうか? われわれは看
    護の未開の文明の入口をやっとまたいだばかりであること
    を忘れまい。まだなすべきことがたくさんある。平凡な型に
    はまることはすまい」(『病人の看護と健康を守る看護』)

     
これは、ナイチンゲール73歳のときの文章です。
     
彼女の、“情熱を持ち続ける力と能力”には、
     脱帽するしかありません。


以上。



準備していくなかで思ったこと。

ナイチンゲールが、自らの過ちと向きあい、
乗り越えていった姿は、
晩年のレーニンの経済政策の転換とダブって
みえました。
いままでの自分の仕事を大胆に見直し、
誤りを直視し、乗り越えていく力。
偉大な仕事をした人の特徴なのであろう。

ナイチンゲールの偉大さを、
また別の角度から学べた講義だった。





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