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2008年2月23日 (土)

空想的社会主義とは

きのうは、古典講座『空想から科学へ』
2回目がありました。

仕事の都合や病欠などで、
残念ながら参加は5名と少なかったのですが、
なかなかおもしろい学習会となりました。

きのうは、「空想的社会主義-何を学び、何を乗りこえたか」
というテーマで、『空想から科学へ』の1章を中心に学びました。

最近はいろんなテーマで話をする機会を
いただいているのですが、
科学的社会主義を話すときが
自分自身、いちばん楽しくしゃべれる気がします。

やはり変わり者、ということでしょうか(笑)

参加者のみなさんにもかなり笑って
いただいた学習会となりました。


では、以下、講義の内容です。


はじめに:細部にこだわらず、流れと大筋をつかむ読み方で



一。『空想から科学』とはどんな著作か
 
1。もとになったのは、『反デューリング論』(エンゲルス著)
  
◇『反デューリング論』とはどんな著作か
   
*論争の書であると同時に、科学的社会主義の理論を
    全面的に展開している著作

    
「つまらない相手との論戦の退屈さも、哲学、自然科学、
    歴史の諸問題についてのわれわれの見解の百科辞典
    的な概観をあたえる試みが効果をあげる妨げにはなら
    なかった」
    (エンゲルスからベルンシュタインへの手紙、
1884.4.11)

    
「これはおどろくほど内容のゆたかな、教えるところのお
    おい書物である」
               
(レーニン『フリードリヒ・エンゲルス』)

 
2。『反デューリング論』の抜粋版-科学的社会主義の入門書として
  
◇フランス労働党の、科学的社会主義理論の普及のため、
   要請にこたえる

  
◇マルクスの紹介

    
「われわれは、このパンフレットにこの本(『反デューリン
    グ論』のこと-長久)の理論的部分からのもっとも適切
    な抜粋をのせたが、それはおそらく科学的社会主義へ
    の入門書となるであろう」
                (フランス語版への序文
1880年より)

   
*実際、ヨーロッパはもとより、世界中でこの『空想から科
    学へ』は紹介・翻訳され、『共産党宣言』とならんで、科学
    的社会主義の普及に大きな役割をはたした。

  
◇日本での普及
   
*1906年(明治36年)に最初の翻訳(訳者・堺利彦)
   
*それから100年のあいだに出版された日本語訳はおそら
    く何十種にものぼり、それだけ多くの人に読みつがれてきた。



二。空想的社会主義の意義
 
1。科学的社会主義の源流のひとつと意義づけられる
  
◇「三人の偉大な空想家」(『空想から科学へ』1)

    
「ドイツの理論的社会主義は、サン・シモン、フーリエ、オウ
    エンという三人の人物、どんなに空想的でユートピア的であ
    ろうと、やはりすべての時代をつうじて最も傑出した思想家
    に属し、今日その正しさが科学的に立証されつつある無数
    の事柄を天才的に予見したこの三人の人物の仕事に、自
    分が支えられていることを、けっして忘れない」
     (エンゲルス『ドイツ農民戦争』
1870年版の序文への追記)

    
「いまではただ微笑をさそうだけの夢想についてもったいぶっ
    てあらさがしをしてまわったり、このような『妄想』にくらべて自
    分たちの気のぬけた考え方の優位性を主張したりすることは、
    三文文筆家(デューリングのこと-長久)にまかせておけばよ
    い。われわれはむしろ、夢想の外皮の下からいたるところで
    姿をあらわしているが、あの俗物どもの目にははいらない天
    才的な思想の萌芽や思想をよろこぶのである」
                           (『空想から科学へ』1)

  
◇ごみばこに投げ捨てるやり方、ではなく
   
*弁証法的否定-肯定をふくんだ否定、発展の契機としての否定

    
「発展の過程における古いものの否定とは、…いっさいを破
    壊し、ご破算にすることではありません。古いもの自身のなか
    から育ってくる力によって、古いもの自身のなかにある積極
    的な要素を吸収し、それを足場とし、素材としておこなわれる
    ものなのです」  
(労働者教育協会編『新・働くものの 学習
    基礎講座1 哲学』学習の友社、
1998年)

   
*私たちの日常生活、日常活動のなかでも、これは大事な
    態度・考え方になる

 
2。フランス啓蒙思想家と、社会主義思想
  
◇フランス革命を思想面で準備した啓蒙思想家たち
   
*封建的な諸勢力の支配を打倒して、ブルジョアジーの支配を
    うちたてた革命
   
*啓蒙思想家たちは、事態の根底にある「物質的な経済的事
    実」ではなく、理性の立場から、封建制社会に批判をくわえた。

    
「宗教、自然観、社会、国家制度などすべてのものに、容赦な
    い批判がくわえられた。すべてのものが理性の審判の前でそ
    の存在の正当性を立証するか、さもなければ存在することを
    あきらめなければならなかった。知性の思考が唯一のものさ
    しとしてすべてのものにあてがわれた」(『空想から科学へ』1)

  
◇「理論的形式上」の後継者として

    
「現代の社会主義は……その理論的形式から言えば、それ
    は、18世紀のフランスの偉大な啓蒙思想家たちがうちたて
    た諸原則をひきつぎ、さらにおしすすめたものとしてあらわれ、
    しかもいっそう徹底させたもの」   (『空想から科学へ』1)



三。3人の空想的社会主義の思想と特徴
 
1。サン・シモン(1760‐1825)
  
◇アメリカの独立戦争やフランス革命に参加
   
*フランス名門貴族の家に生まれる
   
*16歳のとき、軍務につき、アメリカにわたって、独立
戦争に
    参加。人民主権をうたった革命に強い影響を受ける。
   
*フランス革命の最中に土地の売買で儲け、そのお金で学者
    
を集めて新しい社会の研究をはじめる。

  
◇サン・シモンの天才的な洞察
   
*フランス革命を階級闘争-「怠け者」と「働くもの」との階級
    闘争としてとらえた。
    
・現代日本の社会では、階級間の対立ははっきり目に見える
     ものだけれど、当時は「階級」というものを意識することはた
     いへん困難だった。
   
*「働くもの」=「産業者」が社会の管理者にならなければならない
   
*「生産の管理」が行われれば、国家の支配は不必要になると
    考えたこと

 
2。シャルル・フーリエ(1772‐1837)
  
◇「もっとも偉大な諷刺家(ふうしか)」
   *毛織物商のひとり息子として生まれる。
   
*7歳のときに、買った品物に傷があることを正直に客に知ら

    て父に怒られた経験をきっかけに、商売の世界、詐欺とご
まか
    しに満ちている社会に疑問をもつようになったという。
   
*21歳のとき、自分でフランスの商工業の大中心地である
リヨ
    ンに商店を開く。その後も、行商や商店員、あるいは
もぐり仲
    買人など、生活のために商業の分野にたずさわる。
   
*フーリエは、自らの経験にもとづき、商業社会という面から
資本
    主義の害悪を痛烈に批判する、体験的告発者だった。

  
◇フーリエの卓見
   
*「ある社会における婦人の解放の度合いが全般的な解放の
    自然の尺度である」。つまり、女性がどれくらい解放(自由や
    権利を拡大し、社会的な地位を高めているか)されているか、
    ということが、社会進歩の目じるしだ、と語った。
    
・『週刊東洋経済』(08.2.9号「働きウーマン」特集)にみる、世界
     と日本における、女性「解放」の度合い。
   
*社会の歴史発展について、「野蛮-家父長制-未開-文明」と
    いう4段階説をとなえた。資本主義は「文明」段階にあたる。
    
そして、「文明の段階は、未開時代に単純なやり方でおこなわ
    れたあらゆる悪徳を、
複雑な、あいまいな、うらおもてのある、
    偽善的な存在の仕方に高める」と述べた。
    
・今日の新しい奴隷制度ともいうべき日雇い派遣、偽装請負など
     は、その典型例。
   
*また、「文明時代には貧困は過剰そのものから生じる」という、
    弁証法的なとらえ方、恐慌論にもつながる見方をしめした。
    今日の日本社会にもつうじる。

 
3。ロバート・オウエン(1771‐1858)
  
◇人道的な産業資本家として
   
1771年、イギリスの商人の家に生まれる。
   
*フランス革命が始まった1789年には、18歳で早くも紡績
    機械製造工場の共同経営者の1人となる。1792年
には
    マンチェスターの大紡績工場の支配人に。
   
*人道的な立場から、労働者の待遇を改善する経営方式を
    
とりいれる。スコットランドのニュー・ラナークに、
2,000人近
    い労働者が働く大紡績工場をつくり、経営。
大成功をおさめる。
   
*この成功に満足しなかったオウエンは、ニュー・ラナークで
    の成功を、全社会的な規模におしひろげ、新しい社会を建
    設しようと、計画をたてる。その構想を公表し、ヨーロッパ各
    国の政府や支配層に支持を訴える。
   
*さらにすすんで、アメリカのインディアナ州に土地を買って、
    共産主義的なコミュニティ「ニュー・ハーモニー」の建設にの
    りだす。市場経済を排した大きな実験だったが、この計画は
    見事に失敗に終わる。
    
しかしその後も、「イギリスで労働者の利益のためにおこなわ
    れたすべての社会運動、すべてのほんとうの進歩は、オウエ
    ンの名前と結びついている」と賛辞されるほど、労働組合運
    動や協同組合組織の発展などを中心に、多大な貢献をおこなう。

  
◇「性格形成理論」
   
*人間の性格は、生まれつきのものではなく、環境によって
つく
    られる、と説いた。
   
*それを、自分の経営する工場
で実践する。労働時間の短縮、
    
教育施設や幼稚園の設置、年
少者労働や体罰を撤廃し、労
    
働者とその家族にきちんとした家、学校、夜間クラス、無
料医
    療サービス、手ごろな値
段の食料品を提供したといわれている。
   
*結果、オウエンの工場では、それまで道徳的退廃がひどかっ
    た労働者たちが、まじめによく働くようになったといわれ、労働
    条件改善・福利厚生に資金を投じたにも関わらず、利益は多
    かったという。



四。空想的社会主義の弱点と限界
 
1。変革の主体が誰なのか、を明確にできなかった
  
◇「理想社会」を描き、人びとに宣伝し「さあ、ついてこい」という
    ものだった
   
*典型はフーリエの理想村見取り図
                -新聞広告で建設寄付をよびかける

    
「空想的社会主義はじっさいの活路をしめすことができな
    かった。それは資本主義のもとでの賃金奴隷制の本質を
    説明することもできず、資本主義の発展法則を発見する
    こともできず、また新しい社会の創造者となることのできる
    社会的勢力を発見することもできなかった」
    
(レーニン『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分』)

 
2。マルクスの位置づけ
  
◇『フランスにおける内乱』第一草稿より

 
3。空想から科学へ
   
    
「社会主義を科学にするためには、まずそれが実在的な基
    盤の上にすえられなければならなかった」

  
◇現代の私たちへの教訓を考えるならば
   
*職場や社会を変える運動に参加しはじめた人たちが、最初
    から確固たる見通しや社会発展の法則性について、身につ
    けているわけでは、もちろんない。
   
*職場や社会のなかで、不合理や矛盾にぶつかり、「おかし
    い!」と運動に参加してくる1人ひとりの思想も、「よりよい職
    場や社会をつくりたい」という一般的な段階や、自分の目の
    前の切実な要求という、ある意味では狭い視点から出発する。
   
*さまざまな学習・経験をへて、「どうたたかえば要求が実現す
    るか」「どうしたら仲間がふえるか」「こうした問題が起きてくる
    ような社会のあり方」「日本社会のおおもとにある矛盾は何か」
    ということへの、より科学的な考え方や見地に前進する。
   
*1人ひとりが、理想や願望を頭の中だけで考えるのではなく、
    また「誰かがやってくれないかな」という傍観者的態度でもなく、
    「実在的な基盤の上」にたって、自分と組織の課題を明確にし
    ていく必要がある。
   
*そのために、徹底的に学ぶ活動を重視することが求められている。

次回予告:弁証法的唯物論-変革の哲学





以上。


参加者の感想文。


「3人の偉大な空想家たちの考えたこと、行動
したことが、科学的社会主義の理論の形成に
大きく影響したことはとても重要だと思った。
普段、対人関係とかで『この人はダメだ…』と
思っている人からも学ぶことはたくさんある。
『人間って成長する生き物だから』と励ましあ
っていきたい」

「おもしろかったぁ~。本を読むより話を聞くほ
うが分かりやすかった。弁証法的否定は、頭で
分かっていても現実には…」

「女性の社会進出を社会進歩の尺度にするの
は、現代にも通用する考えだと思いました。
東洋経済読んでみよっと。
全否定はとてももったいないことです。現時点
で否定できることがあるからといって、全否定
するのではなく、克服すべき課題を見つけ、次
への発展方向をさぐる、という姿勢をもちたいです」


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コメント

とっても面白い学習会でした☆
私も科学的社会主義の勉強の時はテンション上がっちゃいます↑

今回の学習会は、最近悩んでいた問題を解決する糸口になりました。ありがとうございました!
単なる精神論ではなく、確信をもてる「前向きさ」を教えてくれた学習会でした。
これから、自分や周りを元気にできる学習をやっていいきたいです。

次回も楽しみにしています♪

投稿: まなべ | 2008年2月24日 (日) 00時24分

まなべさんありがとうございます!

楽しんでいただけ、また活動の力になって
もらえたのなら、これほど嬉しいことはありませんにゃ。

次回もヨロシクです。

投稿: 長久 | 2008年2月25日 (月) 10時19分

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