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2007年10月20日 (土)

言葉にこだわって憲法を読む

今日は午後から映画『日本の青空』を
労働学校の仲間と見にいきます。
そこで、久しぶりに憲法のことを書きたいと思います。

最近、憲法学習の講師をしながら、
あらためて感じているのは、
「言葉にこだわって憲法を読む」ことの大切さです。

大江健三郎さんが、憲法9条のなかの、「希求」という
言葉に当時の人びとの思いを汲み取ったように。


最近、日本国憲法の前文のことを話をするときに、
必ず言うことがあります。
それは、
前文の中に、二度、「決意」という言葉が
出てくる
ところがあり、私はそこにこだわりたい、と。

では、どこに出てくるのか、実際にみてみましょう。


日本国民は、正当に選挙された国会における代
表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のた
めに、諸国民との協和による成果と、わが国全土
にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、
政府の
行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのない
やうにすることを決意し
、ここに主権が国民に存す
ることを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国
政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、そ
の権威は国民に由来し、その権力は国民の代表
者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受
する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は
かかる原理に基くものである。われらは、これに反
する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の
関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであ
つて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し
て、われらの安全と生存を保持しようと決意した

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭
を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社
会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。わ
れらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から
免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを
確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専
念して他国を無視してはならないのであつて、政治
道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従
ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に
立たうとする各国の責務であると信ずる。
 
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげて
この崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」



1回目に登場する「決意」。
それは説明するまでもなく、二度と政府の行為として
の戦争を起こさない、起こさせない、という決意です。
侵略戦争の明確な反省です。

2回目の「決意」は、
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、私た
ちの安全と生存を守ろうという、決意です。

この決意は、かなりの勇気と理性が必要です。

「諸国家」を信頼するのではなく、「諸国民」
と書いているところも、大事なところです。
北朝鮮の国家権力は、たしかに何をやらかすか
わからない不安があります。
でも、北朝鮮で日々働き、生活し、幸せを求めて
いるふつうの国民が、日本と戦争することを、
はたして望んでいるでしょうか。もちろん答えはノーです。


平和を愛する諸国民を信頼し、手をつなぐことで、
私たちの平和を守る。なんてステキな決意でしょうか。


自民党の新憲法草案では、前文のこうした「決意」は
バッサリと切り捨てられています。
それは、当時の人びとの憲法にこめた思いをさえも、
切り捨てることなのです。

経済同友会の終身幹事の品川正治さんは、
『経済』11月号の渡辺治さんとの対談で、
憲法との出会いの経験を語っています。

私が日本国憲法に初めて対面したのは、復員船の
なのです。日本国憲法草案が発布された(1946年
4月17日)と言う記事の載った古い新聞が、船内で
配られました。民家からかき集めてきた古新聞で、
『山陰新聞』もあれば『毎日』も『朝日』もあるという、
バラバラだったのですが、とにかく日本国憲法の草案
が載っている新聞が各部隊に配られたのです。それ
憲法の前文も、九条も、そのとき初めて対面したの
ですが、それを読んだ時、全員泣きましたよ
。二度と
戦争はしないと自分たちで決めてはおったのですけ
れども、よもや成文憲法でそこまで書くとは夢にも思っ
ていなかった
。これだったら死んだ英霊も無駄じゃない、
300万に及ぶわれわれの戦友の死にも応えられる。
私は中国の戦線しか知りませんけれども、2000万を
こえるいのちを奪い、それだけの
被害を与えたアジア
諸国民に対して謝り続けていく方法は、もう戦争はし
ないという他にないじゃないか
。一瞬のうちに20万も
の命を失ったヒロシマ、ナガサキの原爆の話はわれ
われも聞いていましたから、そんな戦争をもうできるは
ずがないじゃないかと考えていました。その
私たちの
気持ちを、はっきりと成文憲法の形で出している
ことを
知ったわれわれは、驚きと同時に、それこそ感激の涙
を流したわけですね。
 
ところが日本の戦後の支配政党は、二度と戦争をし
ないという決意はいっぺんもしたことがない
。すぐに押
しつけ憲法という言葉が出てきた。・・・しかし国民にと
っては押しつけられたというより、心から歓迎した憲法
だと私は理解しています
」(P30~31)


当時の人びとの「決意」の重さを、私はこれからも学び、
語っていきたいと思います。



蛇足。

憲法の
第36条。
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁止する」

日本国憲法で「絶対に」という言葉が出てくるのは、
なんとこの条文だけ。普通は、
「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁止する」
と書くはずなんです。

ここにも、「言葉」にこだわることで、
見えてくることがある、と思います。


おしまい。


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コメント

今日は、お疲れ様でした。今日のも今年観た映画にカウントされるのでしょうか? 僕も映画は好きなほうなのですが、やはり今年のベスト1は、今のところ、「それでもボクはやってない」ですね。次が「長い散歩」・・・。別に重い、暗いが好みという訳ではありませんが。3番目は「ナルニア国物語」ですから。子どもは5年生ですが、ちょっとおませで、先日は「包帯クラブ」に付き合わされました。結構観れたけど。
それはさておき、27日神戸行きませんか? 石川ゼミの発表会。今期の受講生で、誰か行く人いないかな? 僕は娘を連れて行くのですが、大勢で行ったほうが楽しいし・・・。

投稿: S本Y郎 | 2007年10月21日 (日) 00時04分

Y本さんありがとうございます。
土曜はおつかれさまでした。

「それでもボクはやっていない」は、私も観ました。
圧巻の映画でした。
私も邦画ではNo1にしたいところですが、
「夕凪の街 桜の国」もすばらしかったので、
「これが1番!」とは言えないのですが。
でも国民みんながみておくべき映画でした。

27日は行く予定はないのです。すみません。
今年のゼミの本を、岡山で心待ちにしています。

投稿: 長久 | 2007年10月22日 (月) 13時52分

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