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2007年1月14日 (日)

日本国憲法の人間観

きのう(土曜日)、岡山県民医連の初期事務研修会に講師で行ってきました。
会場は総社市のさんロード吉備路。

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  いきがけに、
  五重の塔をパチリ。




1年目~3年目ぐらいの事務職員を対象にした研修合宿の1日目。
若い職員にまじって、事務先輩職員のみなさんも参加されていました。
人数は30名ほどだったと思います。

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講義は
「日本国憲法の人間観と民医連医療」ということで、
約1時間20分話をしました。


以下、講義の概要です。


【新自由主義の人間観】
 1。最近の出来事から
  ◇東京渋谷の短大生殺害事件
  ◇NHKスペシャル「ワーキングプアⅡ」の母子家庭への批判の声

 2。新自由主義の人間観
  ◇新自由主義とは
   *市場原理を、経済政策をはじめ、社会のあらゆる分野に押し広げて、
    競争によって経済の効率化と社会の活力を発揮させようとする考え方。
   *現在、この新自由主義の考え方は、政治、芸術文化、思想、教育、
    福祉、医療など、ほとんどすべての分野に入り込み、影響をあたえている。
   *その政策理念とは

  ◇その求める人間像
   *人びとのかかえる生活問題を基本的に「自分と家族による私的努力」と
    「市場における選択」によって解決することができる人間を、「自立した
    個人」と見ている。
   *市場主義的競争原理が主要な社会原理となっているなかでも、「選択の
    自由」を行使できる人間であることが前提。それを行使できない人は、自
    己責任を果たす能力のない、自己努力の欠如した人間として、社会的に
    排除することをいとわない。
   *しかし、この「選択の自由」の範囲は、企業・事業体・行政が用意した選
    択肢を越えることは予定していない。枠が必ずあって、それにはみ出る
    人間が必ず出るということ。
     「成功者」=努力ができ能力がある自立した個人
     「失敗者」=努力のできない「怠け者」であり、そんな人間にたいして
            お金を投じるのはムダである。

 3。医療分野を侵食する新自由主義
  ◇新自由主義の人間観が医療分野に適用されると、どうなるか
   *病気やケガになるのは、「あなたの努力が足りないから」「自己責任ですよ」
   *したがって、「治療費は自分や家族の責任でなんとかしなさい」

  ◇国が国民に保障する医療から、自己責任に基づく医療への転換
   *「医療にはお金がかかるので、そのお金は民間保険に加入するなど、
    自分で準備しなさい」
   *「企業は社会保険料負担が大きくなっているので、これ以上負担すると
    競争力がそがれ、企業がつぶれる。だから企業や国をあてにするな」
   *「医療や福祉にも競争原理を導入したほうが、競い合うことで質の良い
    医療が提供できるようになる」
   *「質の良い医療は、自己努力と責任で買いなさい」
    ・「週刊・東洋経済」10月28日号の特集にみる「医療格差」の実態

  ◇昨年成立した「医療改革法」の中身

  ◇医療分野で「勝ち組」「負け組」がでていいのか?
   *患者間での「質の良い医療をめぐって」の争奪戦
   *病院間での生き残りをかけた経営至上主義の蔓延
    ・例えば、看護師争奪競争のゆきつく先は
   *地域間での競争も加わり、医療ネットワークの破壊がすすむ

【日本国憲法の人間観】
 1。日本国憲法の核心は13条「個人の尊重」
  ◇個人の尊重-みんな、かけがえのない存在
             1)みんな同じ人間
             2)みんな違う人間

  ◇生命、自由、幸福追求の権利

 2。私たちのもつ人間観が問われている-5つの例を参考的に
  ◇『赤ひげ診療譚』(山本周五郎)
   *著者が、登場人物をとおして語らせている、庶民へのまなざし
  ◇『健康格差社会』(近藤克則)
   *「健康も自己責任」という風潮への科学的な批判の書
  ◇『夜と霧』(フランクル)
   *絶滅収容所で、精神科医が経験した人間の悲惨と偉大さ
  ◇享受能力としての人間発達(A・セン)
   *人間は命のつきるまで、発達することができる
  ◇『いのちの教科書』(金森俊朗)
   *ハッピーになるために

 3。こうした生命観・人間観に支えられた、憲法の平和主義と25条の規定
  ◇戦争で命を奪われるなんてもってのほか
   *平和的生存権の宣言(前文)

  ◇すべての人は、健康で文化的な生活を送る権利がある(25条)
   *生存権-それを保障するのは国家
   *憲法13条を中心とする自由権を保障するものとしての社会権

【民医連医療の立脚点とその役割】
 1。民医連医療の存在意義
  ◇憲法の人間観に立脚した医療-「いのちに格差などない」
   *もちろん、個々にそうした観点ですぐれた医療を実践している人や
    病院はたくさんあるが、「全国組織で」「運動として」、実践しようとし
    ているところは他にない

  ◇新自由主義の競争原理から、国民の健康と福祉、医療を守る砦
   *押し寄せてくる「医療改革」と対決する-現場で、地域で、政治の舞台で
   *たんに防波堤となるだけでなく、そうした原理そのものを転換する

  ◇そうした民医連医療を担うのは、いうまでもなく、一人ひとりの職員
   *しかし、意識的に努力していなければ、現在の社会的風潮に流される
   *絶えず人間観を豊かにする努力-事務職はよりいっそう必要

 2。歴史の本流、そのバトンを受けとって
  ◇社会的な流れに抗してのたたかい
   *当然、多大な苦しさや困難をともなう
   *しかし、それは歴史の太い本流であることに、確信をもって
    ・憲法97条の意味



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