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2006年12月13日 (水)

健康格差社会

来月のとある学習会にむけて、
医療問題についての本を、ある程度読んでおかねばなりません。

で、

『健康格差社会-何が心を健康を蝕むのか』(近藤克則、医学書院、2005年)
                                        を読みました。

まず本の値段(200ページたらずで、2625円)にビビッたのですが、
内容はそれ以上に驚きでした。
間違いなく、
ここ数か月で読んだ本の中で、一番ウロコが落ちました

書店の「社会問題」のコーナーに置いてあったのですが、
これは純粋な医学書です。著者は日本福祉大学の教授です。

「健康も自己責任」という風潮が、医学界やマスコミの主流ですが、
その問題にたいしての痛烈な批判と提言の書です。

出版社の見識の高さに、敬意を表したいと思います。


以下、本文より引用。

社会経済的な慢性的ストレスが、『生き抜く力』を蝕む。それによって、
うつに代表される精神的な不健康を招きやすくなる。それらによって交
感神経優位の身体環境となってハラハラ・ドキドキにさらされやすくなり、
ストレスホルモンの過剰分泌などの内分泌学的プロセス、さらには免疫
学的な面での抵抗力の抑制など、いくつかの生物学的な経路を通じて、
身体的な不健康を招く」

「日本は階層間におよそ
5倍もの格差がみられる『健康格差社会』

心理的ストレスは、最底辺層だけを苦しめるのではない。…リストラさ
れた者だけでなく、かろうじて残った者も『次は自分かもしれない』という
心理的ストレスに怯える。さらに、やや余裕をもって正社員として残った
者も、無言の圧力や将来不安から、『自主的に』長時間労働をするよう
になる。これが長期にわたれば、最低層よりも上に位置する者にとって
も、健康によいはずがない」

「所得向上を理由に効率を追求するよりも、失業不安を和らげたり健康
状態を高めたりするほうが、国民全体の幸福度が高まる可能性のほう
が大きい」

追求すべきは『健康で居心地のよい社会』の実現である」

格差が大きい社会とは、底辺から脱出できる可能性が低い社会である
社会的に厳しい環境に置かれている人たちほど、努力や成果を評価され
る機会は少なく、蔑まれたり、みじめな状況を経験することは多い。だか
慢性的な心理的、社会的なストレスは、底辺層ほど大きい。そのストレ
スに耐えきれなくなったとき、それが外に向かって爆発すれば暴力やテロ
となる。内に向かえば、自分を責めて望みを失い『生きていたいと思わな
い』『死んでもいい』『放っておいてくれ』と口にするようになる。このような
状態に至ってしまった人に、保健師が訪問し『閉じこもりは健康によくあり
ません。表に出ましょう』などといくら熱心に指導をしたとしても、果たして
どれほど多くの人が心を開き、希望を取り戻してくれるのであろうか?」

社会的排除の結果としての不健康

「ヘルスプロモーションで有名なオタワ憲章(1986年)は『すべての人に健
康を』というスローガンを掲げ
、『健康のための基本的な条件と資源は、
平和、住居、教育、食物、収入、安定した生態系、生存のための諸資源、
社会正義と公正である
と述べている」

「低い社会階層ほど、狭くて日当たりや風通しが悪く、騒音や排気ガスに
さらされ、寒暖差が大きいなど、快適でない環境で我慢している」

低い社会経済状態の人の人間関係は、貧しくなる傾向がある

「ヨーロッパに目を向けると、社会経済的な条件の違いによる健康の不
平等があることを公式に認め、それを抑制する政策や行動計画を公表
している国がある。それらを手掛かりにすると、
見直すべき政策は、社
会保障政策、労働政策、教育政策、コミュニティ政策、税制度などにま
で及ぶ


引用だけではイマイチわからないと思うので、
ぜひ一読をおすすめします。

先日放送されたNHKスペシャル「ワーキングプアⅡ」では、
一生懸命働いていても、貧困から抜け出せない人たちが
描かれていました。ああした労働と生活が長期に続けば、
健康は確実に蝕まれていきます。
まさに、社会経済的な格差が、健康の格差、命の格差に反映しています。

番組を見ていて、「この人たちの健康状態は大丈夫だろうか…」
「倒れるんじゃないのか…」と、本当に胸がしめつけられました。

なんとかしたい、ほんとに。

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