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2006年11月30日 (木)

すごすぎます、太郎さん。

やはり、この人のスケールは、けた違いです。

『美の呪力』(岡本太郎、新潮文庫、2004年)を読み終えました。

昨年、川崎市にある岡本太郎美術館に行ったとき、
初めて間近に接する作品の放つエネルギーに、
圧倒されたのを、いまでも鮮明に覚えています。

それ以来、岡本太郎に興味をいだくようになり、
本も読んだりしていました。

芸術家、知識人、思想家、感性の人、
どれも、岡本太郎をひと言でまとめることはできない…。
そもそも、そういう枠にはまらない人です。
また、世界的(宇宙的?)な視野をもった人でもありました。


この文庫は、1971年に出版されたものの文庫版です。
この本のもとになったのは、岡本太郎が『芸術新潮』に
「わが世界美術史」と題して連載したもの。

とにかく扱う幅が広く、美術史や人類史の基本的な
知識がないと、なかなか消化できない部分が多いのですが、
一文一文に太郎の魂が入っているので、読みごたえがあります。

石の神秘からはじまって、血、怒り、火、挑戦、仮面、夜、宇宙など…
太郎の芸術論、世界観、人間観が
爆発! してます。

それにしても、“あやとり”にこれだけの考察を加えた人は、
他にいないでしょう。ビビりました。


では、思わず線をひいてしまった文章を紹介します。

「適当に生きようと思えば、逃げ道はひろい。どのようにでもよけ、
迂回できる。問題をぶつけず、容易に楽々と。だが、そのとき人
は死んでいる。生きながら死んでいるのだ」

挑戦は美であり、スタイルだ・・・私はそこに最も人間的な誇りを、
言葉をかえれば芸術の表現を見とるのである」

「文章を書き、自分の考え、問題を追いつめる。当然、
思索自体
がアクションであり、アクションはまた同時に、人間的にいって激
しい思索である
に違いないのだ」


長くなりますが、「あとがき」の言葉も。
これだけ“生”の質を高められたら、ほんとうにスゴイと思います。

「『美の呪力』と題したが、これは昨年1年間、芸術新潮に書き続
けた『わが世界美術史』をまとめたものである。
 この連載の企画をもって芸術新潮の山崎省三氏が私を訪れた
のは1969年11月。ちょうど万国博の準備がまさに追い込みに
かかり、現場は殺気立ってきた時期だった。大阪・東京をとんぼ
がえりの連続。原稿、しかも世界美術史などという、厖大な素材
を前提とする仕事に、とうてい取り組める状況ではなかった。
 しかし、
不可能と思われる条件だと逆にやりたくなる。忙しい時
にこそ根源的な問題に身をぶつけたくなる
幸か不幸か、私はそ
ういうたちなのだ。
 以来1年間、さっきも言ったように、ものを作る仕事と、問題を
展開し文章を書く、2つのモメントが私の中でギリギリと回転し、
身が引き裂かれる。
それはまた壮烈な充実感でもあった。
 だが何といっても原稿にはひどく時間がとられた。対極の引っ
張りあうバランスが崩れて、書く方に重みが傾きはじめると、私
はふと窒息する思いがしてくるのだ。
爆発したい欲求にかられる。
 ここでしばらく打ち切り、今当分の間はもっぱら造形物、巨大な
モニュメントの仕事にかかる。しかし
書き続けたいモチーフは限
りない。
「死」「迷宮」「エロス」中世の問題、異質文化の混血、そ
して「東洋」-現時点でこそ、西欧的秩序の逆方向から世界を眺
めかえすべきだというのが私の信念である。
 
すでに激しく書き展開してゆく情熱の予感が、私のうちに燃え
はじめている



長くなったついでに、文庫版の「解説」をしている、
鶴岡真弓さん(美術史家・立命館大学教授)の言葉もご紹介します。

「『美の呪力』を読むことは、『岡本太郎』による『世界美術館』を歩
くことである。その美術館は、おそらく世界一たくさんの展示室と
テーマをもち、世界一陰影に満ち、世界一わたしたちに不思議な
希望をあたえつづけてくれる場所である」

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